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パリを自転車で走って思ったこと [モビリティ]

下の写真は、今回の出張宿泊したパリのホテルから見た交差点です。
まるで路面電車のように、道の中央を貫く自転車道が目につきます。
フランスも日本同様、自転車は車道の端(フランスでは右側)を
クルマと同じ方向に走ることが原則となっています。
ところがパリの自転車道は、歩道にあったり、中央分離帯だったり、バラバラ。

コミュニティサイクル「ヴェリブ」を借りて実際に走ってみたのですが、
慣れるまでけっこう気を遣ったのも事実です。
でもしばらくすると、その場その場の事情に即して、
臨機応変に自転車道を作った結果であることが理解できました。

parisroad.JPG

最初に紹介した交差点で言えば、道の両側にホテルがあり、
空港行きのシャトルバスの乗降場もあるので、
車道の端に自転車道を敷設することは難しいのです。
しかも自転車でホテルを訪れる人は少ないはず。
そういう事情を考えると、道の中央を貫くことに納得なのです。

自転車は車道の端を走るというルールを守ることはもちろん大事です。
でも自転車専用道が用意されるなら、自転車やクルマに乗る人にとって
真に使いやすい道を作るほうが大切であるはずです。
パリの自転車事情はお手本にはならないかもしれないけれど、
この柔軟な考え方は参考にすべきではないかと思いました。

オートリブに見るパリの本気 [モビリティ]

半年ぶりにパリを訪れているのですが、いちばん驚いたのは、
昨年末からサービスを始めたEV(電気自動車)シェアリングのオートリブです。
前回来たときはサービス開始前だったので、姿を見かけませんでした。
ところが今回は、街のあちこちにステーションがあり、
専用車両の「ボロレ・ブルーカー」が走る姿もひんぱんに見かけます。
オートリブは早くも、新しい公共交通として認められつつあるようなのです。

思い返してみれば、コミュニティサイクル「ヴェリブ」もそうでした。
ヴェリブが導入して間もない頃、パリに行く機会があったので、
どこかで見られるかもしれないと期待しながら現地に降り立つと、
市内のあちこちで当然のように走っていて、驚いた覚えがあります。
今回のオートリブも、それに近い勢いで風景の一部になりつつあるようです。

mobi0510.JPG

パリの新しいモビリティはどうしてすぐに市民に受け入れられるのでしょう。
理由はいろいろありますが、個人的には当初から250台、250ステーションという
大規模での導入を実施したことが効いていると思っています。
その後も増備は続いているようで、5月中旬には1750台に達するそうです。
そういえばヴェリブも当初から750ステーション、10648台でのスタートでした。

ところが日本で同様のモビリティを立ち上げようとすると、
失敗した時のリスクを恐れてか、期間限定の実証実験としたり、
わずか数台という小規模での導入にとどめる例が目立ちます。
これでは市民が使おうという気にはならないでしょう。
そのため多くの実証実験が、良い結果を残せずにいます。
どうせやるなら、オートリブのような本気を見せてほしいものです。

Value for Moneyの意味 [ニュース]

関越自動車道で起きたツアーバスの衝突事故は、
ついに運転手の逮捕という事態に発展してしまいました。
もちろん居眠り運転で事故を起こした運転手にも罪はあります。
しかし運転手の逮捕で、問題が解決したわけではありません。

事故を受けて国土交通省は、現在670kmとなっている
1人乗務の距離上限を見直す方向だそうです。
たしかに個人的な経験でも、670kmは長すぎです。
でもこれを500km程度にしても、事故は再発するでしょう。

高速バスには乗合バスとツアーバスがあり、
ツアーバスは多くの場合、ツアー会社から委託を受けた
バス会社が運行を担当するという形態を取っています。
両者には歴然とした上下関係があり、加えて規制緩和による
自由競争が、過酷な労働環境を生み出していることは、
新聞テレビなどでも報じられています。

なのに責任を追及されるのはバス会社だけ。
振り込め詐欺の「出し子」にすべての罪を負わせるようなものです。
なぜツアー会社にも責任を負わせようという動きがないのでしょうか。
自由競争の結果、安全が軽視されるのであれば、
最低料金を設定する動きがあってもいいと思うのに、それもありません。
背後に見えざる力が働いているような気さえします。

それに、厳格な基準に則って運行を行い、ゆえに料金も高い
乗合バスが、同じ高速バスということで風評被害を受けないか心配です。
乗合バスは「高速バス」、ツアーバスは「長距離バス」と
名称を完全に分け、異なる名称を使用した場合には厳罰を科すという
手法を導入しても良いと思いますが、そういう意見も聞かれません。

高速バス.jpg
写真京王電鉄バスの高速乗合バス)

今回の事故は利用者にも責任の一端があると考えます。
「安ければ安いほどいい」という消費者心理です。
その影響はバスに限りません。たとえばものづくりにおいても、
顧客の声に応じて度を超えたコストダウンを追求した結果、
商品としての魅力が失われた例をいくつも目にします。

英語にValue for Moneyという言葉があります。
「価格に見合った価値」という意味ですが、なぜか日本では、
「内容のわりに安い」という意味に置き換わったりします。
殺人事件が起きると「人命はお金には換えられない」と言いつつ、
人命に直結するバスの料金は安いほどいいと主張する。
いま一度「いのちの価値」を再考すべきではないでしょうか。

子供よりもクルマが大事? [ニュース]

京都府に続いて、今日は千葉県愛知県でも、
登校中の児童クルマが突っ込み、死傷者を出す事故がありました。
一連の事故で、個人的にもっとも疑問を抱いているのは、
平野文科相が「通学路の見直し」という言及を行ったことです。
子供の通行よりクルマの通行を優先した、文科省とは思えない言葉です。

日本が自動車に依存しすぎた社会であることは、何度も指摘されています。
ヨーロッパでは、繁華街へのクルマの乗り入れを禁止した都市を多く目にします。
クルマ社会と言われるアメリカでも、スクールバスの乗降中は、
対向車線を含めて他のクルマも停止するルールが一般的になっています。
ところが日本は、これだけ悲惨な事故が起こったにもかかわらず、
加害者のクルマより、被害者である通学路が悪いという風潮になっています。

mobi0427.jpg

一連の事故は、いずれも学校への道すがら起こりました。
集団登校であれば、時間やルートは限定されているはずです。
それならなぜ、その時間だけ通学路を車両通行禁止にしないのでしょうか。
一連の事故の状況を見れば、どんなに取り締まりを強化し、
安全技術を進化させても、再発の可能性が残るでしょう。
もちろんそれ以外の場所や時間でも、子供への配慮は必要ですが、
集団登校時の通学路を歩行者専用とするだけでも、リスクは大幅に減ります。

私はモータージャーナリストとして、自分の意志でいつでもどこでも
移動できるというクルマの魅力を、メディアなどでアピールしてきました。
でも我々はその自由を、必要以上に行使しすぎてはいないでしょうか。
子供は未来の地球を支える、大切な宝です。
しかも日本は、ただでさえその子供が減り続けているのです。
社会のために、自由を手放す。そんな勇気が求められている感じがします。

新東名はリニアになれないのか? [モビリティ]

先週開通した新東名高速道路を初めて走りました。
といっても御殿場ジャンクションから長泉沼津インターチェンジまでの
わずか1区間を往復しただけなのですが、
カーブや勾配が緩やかなので、とても走りやすいと感じました。
でもその一方で、ちょっと物足りないと感じたのも事実です。

ひと足先に開通した新名神高速が、名神高速とは別ルートを通るのに対し、
新東名は東名高速と近い場所を通っています。
前述したように、カーブや勾配が緩い上に、インターチェンジは少なめです。
既存の国道に対するバイパスのような存在と言えるでしょう。
にもかかわらず最高速度は100km/hのままで、料金も同じです。

shintomei1.JPG

近い場所に道路を2本造りながら、機能が同じ。もったいないことです。
120km/hに上げる程度なら、安全性能や環境性能に大きな差はないでしょう。
たしかに80km/h制限の大型トラックとの速度差は大きくなりますが、
それなら深夜を除き、トラックは東名、乗用車などは新東名というように、
車種によって道路を使い分ける考え方もあったのではと思います。
もちろんその分、通行料金は東名より少し高く設定すればいいでしょう。

あるいは将来的に、片方の高速道路を自動運転対応として、
現在と同じ手動運転のクルマと道を分けるという使い方もできるでしょう。
作り手は、災害時の代替ルートとして役立つことを強調していますが、
ここまで近い場所を走る道路を代替ルートと呼ぶことにも違和感があります。
そもそも東名高速の代替ルートなら、すでに中央自動車道があります。

新東名は、東海道を貫く道路としては、国道1号線、東名高速に続く道です。
鉄道で言えば、東海道線新幹線に続く「超電導リニア」みたいな存在だと
勝手に思い込んでいました。でも実際は「もう1本の新幹線」でしかありません。
せっかくもう1本の道路を作ったわけですから、より良い交通環境実現のために、
運用面で新しい挑戦をしてほしかったという気持ちを抱いているところです。

忍び寄る公共交通の危機 [ニュース]

今週のニュースで個人的に衝撃的だったもののひとつに、
国際興業バスの4月9日の発表がありました。
埼玉県の飯能営業所を閉鎖し、同営業所が運行する路線から
全面撤退を検討中という内容でした。

赤字ローカル鉄道やバスの廃止は、今に始まった話ではありません。
しかし今回は、東京都に本社を構え、ターミナル池袋に乗り入れる
バス会社の、都に隣接する埼玉県飯能市での話です。
個人的に、従来の鉄道やバスの廃止のニュースは、
自分の居住地から離れていたために、実感が薄かったことは否めません。
しかし今回は、都民にとっても身近な出来事だと感じました。

kokusaibus.jpg
写真は池袋駅西口を走る国際興業バス)

クルマがあるから廃止になってもいい」という人がいます。
しかし私が昨年、書籍執筆のために取材した富山市では、
クルマを自由に使えない人の割合は3割にも上っているのです。
おそらく他の都市でも似たような状況でしょう。

昨日京都の祇園で、運転者を含めて8名が死亡した事故では、
運転者がてんかんの治療を受けており、
病院からは運転を止められていたという報道がありました。
似たような状況でクルマを自由に使えない人もいます。
「クルマがあるから鉄道やバスはいらない」という主張は、
自分さえ良ければそれでいいという主張に限りなく近いでしょう。

運賃収入で経営を行う日本の公共交通は限界にきており、
その問題は大都市周辺にまで波及してきています。
公共交通は行政サービスだから、公費で支えるのが当然という
欧州流の考え方を1日も早く導入すべきだと痛感しました。

「有識者会議」の謎 [ニュース]

国土交通省は今日、「首都高速の再生に関する有識者会議」を設置し、
第1回会議を開催したことを発表しました。
古い場所では建設から半世紀近くが経過して老朽化が進んでいることに加え、
以前このブログでも触れた日本橋に代表される景観問題や、
安全面の問題などを解決するために組織されたとのことです。

それ自体は納得できるのですが、会議の委員名簿を見て驚きました。
自動車業界関係者と思われる方の名前が見当たらないのに対し、
なぜかファッションデザイナーや政治ジャーナリストなど、
今回のテーマには直接関係なさそうな方が何人も入っているのです。

shutoko.jpg

これを見て思い出したのは、昨年10月にやはり国土交通省が立ち上げ、
先月中間とりまとめを発表し、4月24日までパブリックコメントを受け付けている
「ナンバープレートのあり方に関する懇談会」です。
こちらには自動車業界関係者を中心に組織されているようですが、
もっとも重要だと思われるデザインの専門家は目にすることができません。

中間取りまとめとして発表した新しいプレートのイメージを見て、
ほとんどの人がカッコ悪いと思ったでしょう。
デザイナーが懇談会に入っていないわけですから、当然です。

同じ国土交通省が立ち上げ、当ブログでもガイドライン(こちら)を紹介した
「安全で快適な自転車利用環境の創出に向けた検討委員会」では、
なぜか首都高速の有識者会議にも名を連ねているジャーナリストを除けば、
自転車に造詣の深い方ばかりで、発表されたガイドラインも納得できる内容でした。
それだけにナンバープレートの懇談会と首都高速の有識者会議には、疑問を抱いています。

「各論反対」よりも「総論賛成」が大事 [モビリティ]

2010年末に日産リーフ、昨年末に三菱ミニキャブMiEV、
そして今年1月にはトヨタ・プリウスPHV(プラグインハイブリッド)と、
外部電源からの充電によって走る自動車が少しずつ増えてきました。
ただ価格は相変わらず、ガソリン車とは大きな開きがあります。
リーフは約376万円、ミニキャブMiEVは240万円、プリウスPHVは320万円と、
補助金を活用しなければ手を出しにくい状況にあります。

最大の理由はリチウムイオン電池が高価なことですが、
量産効果によるコスト低減が進みにくい構造も関係していると思っています。
すべての自動車会社が同じメーカーや大きさの電池を使えば、
少しは低価格に結び付いたと思うのですが、現状はバラバラです。
(下の写真は本文とは関係ありません)

mobi0406.JPG

あるエンジニアに「なぜ統一できなかったのか?」と聞いたところ、
「当社が使用する電池がもっとも性能が良い」という答えが返ってきました。
「電池メーカー間の競争力を保ったほうがいい」という言葉もありました。
車載用電池は現在、グローバルレベルでの競争になりつつあります。
しかしながら日本の会社は、いまだ国内での競争にこだわっているようです。

政治や経済の世界にも言えることですが、最近の日本は、
「総論賛成」よりも「各論反対」を重視しすぎではないでしょうか。
少数意見の尊重は大切ですが、尊重しすぎると、いつまでたっても前進しません。
リチウムイオン電池は、日本で発明された技術です。その優位性を生かし、
エコカー競争の勝者になるという目標には、全社賛同しているはずです。
だからこそ日本の総力を結集して、普及に邁進してほしいと考えています。

上下分離は日本に根付くか? [メディア]

先週土曜日に放映されたNHKスペシャル「インフラ危機を乗り越えろ」。
公共交通もインフラのひとつなので、期待して見たのですが、
結果から言えば、レベルの低さが目につきました。
ひとことで言えば、「決められない日本」を象徴するような内容でした。

それ以上に気になったのは、私も取材経験のある富山市のコンパクトシティ政策について
課題を紹介したあと、会津若松市では水道事業の民営化について
市民の合意を得て実施したために、市民から好感を得られているという報道でした。
富山市が一方的にコンパクトシティ化を推進したかのように見える内容ですが、
拙著でも触れたように、同市は入念な合意形成をした上で、事業を推進しています。
逆に会津若松市には、いまなお民営化に反対の人がいるでしょう。

その後番組で紹介された長野県下條村の村長は、6割の賛同が得られたら
行動に移すべきと発言し、ゲストの増田寛也元総務相氏も同意していました。
自治体規模の集まりに、100%の合意形成などあり得ません。
富山市と会津若松市の政策に大きな差はないはずであり、
無理矢理ストーリーに仕立てた恣意的な報道には怒りさえ覚えました。

富山セントラム.jpg

それ以上に驚いたのは、富山市がコンパクトシティの核として敷設した市内電車環状線と、
会津若松市の水道事業はともに、上下分離方式という共通項があるのに、
その点について一切言及しなかったことです。
上下分離とは、インフラの設置や維持は自治体が行い、運営を民間企業が担当するもので、
交通や水道のみならず、市民会館などの公共施設にも導入が始まっています。

地方都市のインフラに際して、上下分離は問題解決のための手法のひとつと考えています。
なのに番組ではゲストの専門家も含めて、誰もこの方式について口にしなかったのです。
上下分離という考え方そのものが日本に根付いていないのか、
それともNHKの関係者が知らないだけなのか、よく分かりませんが、
日本のインフラ問題を解決するにはやるべきことが多いと感じた週末の夜でした。

シムドライブと維新塾の共通点 [ニュース]

EV(電気自動車)ベンチャー企業のシムドライブがきのう、発表会を行いました。
昨年3月に発表した先行開発車事業第1号に続く、
第2号車のお披露目と、第3号の事業開始をアナウンスしたものです。
内容についてはこちらこちらをご覧いただくとして、
クルマそのものだけではなく、ホテルの大宴会場を埋めた数多くの報道陣にも驚きました。
既存の自動車メーカーが開催する新型車発表会に匹敵する規模だったのです。

単なる試作車なのになぜこんなに人が集まるのか、不思議に思っている人もいました。
ただ私はちょっと違う印象を抱いていました。
橋下徹大阪市長が立ち上げた「維新塾」に通じる雰囲気を感じていたのです。

日本の自動車産業に、急速な電動化と、製造部門の海外移転という嵐が吹き荒れています。
既存のピラミッドの中で活動してきたサプライヤーの多くが、危機感を抱いています。
新たにEV技術を習得し、メーカーと契約を結ぶのは、きわめて困難です。
そんなとき、さまざまな企業が平等な立場で開発に従事し、技術を共有できるという、
オープンソースのビジネススタイルを導入したシムドライブが生まれました。

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たしかに現状では市販車は持っていません。でも社長の清水浩氏は、
30年以上もEVの研究開発を続けてきた、この分野の第一人者です。
現状に不安を抱いた企業や団体が殺到したのは当然と言えるでしょう。
国政での実力は未知数なれど、現状を変えたいと思う人々が数多く集まる
橋下市長の維新塾に通じるものがあると感じたのはその点にあります。

クルマの構造も、ビジネスの手法も従来の自動車とは違うシムドライブの手法が、
日本で結実するかどうかは、現状では分かりません。
個人的には、以前ここで紹介した車いすの電動化モビリティWHILL同様、
海外展開も視野に入れて活動したほうが、良い結果を招くのではないかと考えています。
日本のEV技術は世界最先端であり、十分に武器になると思っているからです。
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